INTERVIEW

やりたいことを大切にして
それを思いっきりぶつけるのが
いいと思います。
ビジュアルクリエイティヴ本部
制作部2グループ(2007年入社)
松谷 昂さん

入社からこれまでのキャリアを教えてください。

面接時から映画志望でした。希望を汲んでいただいたのかわかりませんが、比較的早い段階で映画部に配属になりました。1年目はレンタルビデオ店の営業で新潟などを担当しました。2年目はヴィレッジヴァンガード、いわゆるCDショップとは少し異なるルートの営業担当でした。その後、マーケティング部で1年間、関東のTSUTAYAを訪店して、売り場展開等の提案をする仕事をしました。2010年に映画部に異動後はずっと同様の部署で、現在もその後身にあたる部署です。異動してすぐの映画部はパッケージの宣伝と邦画制作と洋画制作の3部門に分かれていました。一年目は邦画・洋画・宣伝を兼務でやっていて、二年目以降は洋画専門でした。本当は邦画希望だったのですけど、知らないうちに洋画の部門に行っていましたね。とは言っても普段からよく見るのは洋画だったので、嫌だとかでは全然なくむしろやりやすいしとても楽しく仕事しています。邦画希望だったのは大学で自主映画撮っていたからです。元々は映画を作りたかったので、就職活動では制作会社も受けていました。ただ、専門学校に行って制作を学んでいたわけでもなかったので、映画に関わる会社を受けていてポニーキャニオンに採用していただいたという感じです。
現在はビジュアルクリエイティヴ本部で洋画作品を担当しています。ビジュアルクリエイティヴ本部は大きく宣伝と制作に分かれていて、宣伝は、二次利用(映画公開後、DVDなどのパッケージ化や配信など)の宣伝と配給に分かれています。ここの部署での制作とは、パッケージ化や配信するときの権利を取ってきたりする仕事です。制作担当ですが、僕が担当する作品全てに宣伝がついてくれるわけでは無いので、そういうものは僕自身で宣伝もします。あと宣伝担当がついていても、結局はその担当の人と一緒に話し合いながら仕事しているので、宣伝のことも携わらせてもらっています。

現在の業務について詳しく教えてください。

洋画においてまず初めにする仕事は買い付けになります。例であげると、『ラ・ラ・ランド』はポニーキャニオンが買い付けた作品ですね。買い付けって何かざっくりいうと、カンヌ国際映画祭のように有名な映画祭からあまり知られていないような映画祭、例えばアメリカンフィルムマーケットという世間的にはマイナーなものまで映画のマーケットに訪れて、新しい作品をいくらで買うか相談して権利を買ってくるというものです。もちろんこの方法以外にもマーケット期間外に買う場合もあります。
そして次は、その権利を日本国内で運用していきます。日本国内の全権利を買った場合は、配給を行い、その後パッケージと配信をほぼ同時期に行い、テレビで放送していくという感じです。配給は日本国内で初めてその作品が出回るので一番大事ですね。そこで正直当たるかコケるかが決まってくると思います。なので宣伝部の配給担当が主軸になりながらも連携しながら協議を重ね公開まで持っていきます。実働的な部分は配給担当の仕事ですが、例えば予告のラフができたら一緒に見てコメントしたり、ちょっと俯瞰的に見るのがこちらの役割かと思います。
公開後はパッケージ化について、同じビジュアルのままパッケージ化するのかとか、特典映像は何をつけるとか具体的に商品プランを考え、それをどう売っていくかなどの話し合いを宣伝担当とします。DVDを作り、発売スケジュールの編成をしたりするのは僕のチームの仕事ですね。パッケージ発売と同時もしくは先行して配信をスタートし、その数ヶ月後にテレビ放送があります。配信・テレビの専門部署担当はまた別にいるので、そのチームと話し合い、編成スケジュールやどう売っていくか等の戦略を決めていきます。
基本的に実働的に作るところはパッケージ化の部分だけで、あとは俯瞰的な目を持ちながら他部署と連携して進めていきます。ただ、最終的な売り上げの数字の責任はこちらにあるので、全体的なバランスを見ながらポイントによって勝負かけるところを作ったり戦略立てて、シビアかつ積極的に数字を取りに行くことが大切な仕事です。さっき、配給でほぼ結果が決まるから一番大事と言いましたが、配給で苦戦してもそれ以外の窓口で稼ぐという想定で買うこともあります。そういう値段で買って、その後配信・DVDなどの2次宣伝でリカバリーをする戦略です。そういう試算をするのも僕らのチームの仕事です。こうやって話すと色々やっていますね。(笑)
例えば買い付けで、よし、買おう!と言って僕一人で買えるわけでは無いです。色々なものを動かすには時間や手間がかかりますので、常に色々な人と話し合いを綿密にしながら買い付け、様々な部署への橋渡しをして国内に送り出すルートを作るのが仕事です。

具体的に業務内容ややりがいや大変なことを教えてください。

僕の主業務は、EC店舗の管理やキャンペーンです。朝出社したら、店舗の注文の処理、出荷手配、メールチェックを行います。後は、担当作品の販売戦略を考えたり、先輩の業務をお手伝いします。今の部署に入って半年経ったので、これからは自分から新しいことを積極的に提案したり、自分なりにマーケティングをしていきたいと思っています。

洋画制作のチーム構成を教えて下さい。

洋画担当制作チームは僕と、僕と同じ様な業務をしている人がひとり、マネージャー、シニアエキスパートでサポートしている4人です。なので現場担当は2人ですね。
もう一人の現場の担当は同じ年代の女性で、最終的な目標は一緒なのですけど、少し業務の内容が違います。彼女は制作ですがより配給チームと密に関わっています。というのも、洋画は海外作品なので何か広告や宣伝材料を作った際には権利元の許諾が必要なのですよね。海外の権利元とやり取りをするのは結構大変です。彼女はそんな仕事を担っています。僕は英語が得意なわけではないので、その方やあとはシニアマネージャーが英語を駆使して海外の許諾を取ってきてくれます。

マーケットで買うときは既に現地では公開されているものですか?

基本的には公開されていないことが多いです。実際に買い付ける時にはざっくり分けると2パターンあって、まず一つはマーケット内で上映していてその場で観て買うというものです。権利元がマーケット内で「この日に上映します」と決めているのでそこで観て良いなと思ったら買う、という流れです。
もう一つは、企画段階や完成前に買うというものです。つまり本編を観ないで買うのです。脚本を読んだり、キャスト・スタッフの情報から買います。例えば『ラ・ラ・ランド』はこのパターンです。実はこのパターンも非常に多いです。逆に言うと権利元も完成前から売り出すんですよね。バイヤーの立場としてはリスクも高いので本当は観てから買いたいのは当然ですが、いい作品は早く売れてしまったりもするのでそういう事前情報から吟味して買い付けを決めます。
正直、これは観てみないとわからない!と思う作品もたくさんあります。そんな作品は見送りにするわけですが、企画段階で買わなかったものがその後マーケットで流れて観てみて、「やっぱり面白くなかったな」と安心したり、「うわあ、こんな面白かったのか、あの時買えばもっと安く買えたかも…」とへこむこともよくあります。でも、出来が良いものは適正であれば高い額でも出す価値があるのでそれから交渉することもあると思います。
どちらのパターンでも買われなくて、既に上映されたものがマーケットに出ていることもあります。稀にそんな中で、「あれ、これあんまり売れてないけど良いじゃん!!」ってなれば買うこともありますが、だいたいそこまでは売れ残らないです。
業界外の方と話をすると、「え、観ないで買うの!?」と驚かれるのですけれど、昨今は当たり前にある買い方な気がします。

企画段階の脚本は権利元と直接やりとりして送ってもらったりするのが基本ですが、稀に「脚本は渡さないので、マーケットのこの時間、この部屋の中でだけ読めます。」という時もあってそんなときは大変です。英語ができる人がひたすら脚本を読んで、写真が撮れるわけでもないのでそれを覚えて僕たちに伝えてくれて、買うかどうかを決めます。
あとは脚本を評価する会社が別にあるのです。「10点満点中、オリジナリティ5、会話10 会話が面白い脚本だ」とか。色々な判断材料もあるのですけど、でもこれって日本では通用しなかったりするので、当たる作品を見極めるって難しいですね。

松谷さんは『ラ・ラ・ランド』買い付けも担当されたということなのですが、良ければ買い付け秘話を教えてください。

『ラ・ラ・ランド』は買い付けとしてはとても面白かった作品ですね。この作品はアメリカンフィルムマーケットという見本市で買い付けをしたのですが、ちょうど買い付けに行く時期に、監督であるデイミアン・チャゼルの『セッション』という作品がアメリカで公開されていて、当時彼は日本ではまだ無名でしたが、現地ではすでに『セッション』が話題になっているという情報を仕入れてから我々は注目はしていました。マーケットに行った時には『ラ・ラ・ランド』はまだ企画段階の作品で、主人公2人の俳優も違う上に、当然ながらミュージカルなのに歌も聞くことができない状況でした。ですがその当時『セッション』が北米で公開されていたこともあったので、まずは監督の作品がどのようなものなのかを判断するために、数名で実際に現地の映画館に足を運んで観ました。そこで『セッション』の凄さを目の当たりにして買い付けに踏み込んだというのが一連の流れです。マーケット中に日本公開前のタイトルを映画館で観て、その監督の次作を買い付けるという流れはあまり経験したことがなく、それを含めて『ラ・ラ・ランド』の買い付けはとても面白いものがありました。後になって聞いてみると他社も『ラ・ラ・ランド』は注目していたらしく、企画段階でいち早く踏み込むことができたから競り勝てたというのはあります。結果としてはキャストも変わって作品自体もとても面白いものになったのでどこよりも早く判断することができて良かったと思います。

では、ある種「賭け」みたいな要素はあったのでしょうか?

もちろん様々な要素を考慮して最終的には判断したのですが、ミュージカルというジャンル上、判断が難しかったのも事実です。アクション映画とかでしたらアクションの派手さとか規模とかである程度売れる予測はつくのですが、ミュージカルでさらに音楽もオリジナルとなると判断はますます難しくなると思っていました。面白くない映画でも宣伝次第でヒットになることもあるし、やり方次第ではありますけど、ある種はの賭けみたいな部分ももちろんあると思います。(笑) でももちろんただのギャンブルにならないよう情報を集めて、みんなで精査し自信を持って買い付けはしていますけどね。(笑)

『ラ・ラ・ランド』の完成形は想像していた感じと同じでしたか?

いや、私は想像通りではなかったですね。完成前、途中まで出来た映像とかを観て、いい出来栄えになってきているとは思いましたが、正直ここまでヒットするものに仕上がるとは思いませんでした。完成形を観た時は、これはとんでもない映画だなーと率直に感動しました。日本の興行収入もアメリカに続く2位でしたし、昔ほどヒットするのが難しい日本でここまで行ったのは今振り返ってもすごいなと思います。

今後どのようなことをしていきたいですか?

もともと学生時代は映画そのものをつくる仕事をしたいと思っていたのですが、ポニーキャニオンに入り、洋画を担当するようになってからはそれが変わりました。これからも洋画に携わっていきたいのですが、今はなんとなく世の中の映画離れが進んでいる感じもあるので、若い人たちや映画をあまり観ない人たちも今後映画を観るようになる文化を作りたいです。ですから、学生時代のように映画を撮りたいという気持ちよりは、いまの仕事の延長上で洋画や邦画に関係なく映画界を盛り上げていくようなことをしていきたいですね。

どんな後輩と働きたいですか?

何事にもオープンな人はとてもいいと思います。もちろん自分の中での軸は定まっていたほうが良いですが、その上で他人のアドバイスを素直に聞けることはとても大切なのではないかと思います。そういう人の方が感性も磨かれますし、こちらとしてもとても接しやすくて一緒に仕事をしたくなるなと思います。

就活生に対してメッセージをお願いします。

やはりやりたいことを大切にして欲しいですね。それを思いっきりぶつけるのがいいかと思います。私は周りに流されて就活をやった節があるのですが、それでもやりたいことの軸はぶらさずにしていたので皆さんもそういった部分を大切にして欲しいと思います。

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